新派の十八番に
この白糸が、馬車で知り合った村越欣弥と偶然にも天神橋の上で再会し、働きながらいつか金をためて上京、法律の学問を修めたいとする彼の気持ちを知ります。
そこで女は、自分にその金を出させてくれというのです。
「縁というものも始めは他人どうし。
ここでおまえさんが私の志を受けてくだされば、それがつまり縁になるんだろうじゃありませんかね」。
そしてこうもいうことを忘れません。
「私だって泥坊に伯父さんがあるのじゃなし、知りもしない人を捉えて、やたらお金を貢いでたまるものかね。
私はおまえさんだから貢いでみたいのさ」
「遠慮も何も要るものじゃない。
私はおまえさんの希望というのがかないさえすれば、それでいいのだ。それが私への報恩さ」
・・・しかし、その仕送りのため、殺人まで犯さなければならなかった彼女に、鏡花は、新しく赴任してきた検事代理村越欣弥によって死刑を宣告させます。
と同時に「一生他人たるまじと契りたる欣弥」なりと、エンデングは欣弥の自殺によって終わっています。
しかし、この悲劇的結末がかえって世間の喝さいを浴び、またその成功によって、当時の危機からも鏡花はようやく脱することができたのです。